就活で「社風」という言葉を使うとハマる!?「組織風土」に注目せよ
2016.3.15 7012Views
皆さん、こんにちは。常見陽平です。
なぜ、「組織風土」が大事なのか?
学生さんから質問を頂きました。
「企業選びの際になぜ"組織風土"を知ることが大事なのですか?」
「それは、どうやったら分かるものですか?」
というものです。
お答えしますね。
なぜ、「組織風土」を知ることが大事なのでしょう?それは、まさに自分に合った企業を探すためです。「組織風土」が自分に合う企業なら、 ストレスなく活躍できるのです。「組織風土」と言うと、ややカタイ表現ですが「カルチャー」とか、より柔らかい言うならば「ノリ」のようなものです。
私は「組織風土」について、いつもこの例えで説明しています。それは、大学のテニスサークルです。たいてい世の中のテニスサークルは次の3種類に分けられます。
1.体育会なみに練習するサークル
2.テニスもそれ以外(アフターの飲み、合宿と称した旅行、ハロウィンやクリパなど)も力を入れるリア充系
3.テニスラケットが要らない、ひたすら遊び系
さらにインカレかどうかなどで分類されます。同じ「テニスサークス業界」でもこれだけ違うわけです。インターハイなどに出場経験のある人が3のサークルに入ると、正直つらいですし、学生になったら遊びまくるぞと思っていた人が1のサークルに入ってもついていけないでしょう(それぞれ、入れてくれない可能性もありますが)。
下世話な例えのようですが、企業社会においては同じ業界の大手企業でもまったく「組織風土」は違うわけです。スピードを重視する企業もあれば、堅実に丁寧にすることをよしとする企業もあるのです。企業選びの大事な着眼点だと言えるでしょう。
「社風」は聞いてもわからない?
さて、この「組織風土」ですが、どのようにすれば分かるでしょうか。
ここでよく「社風」という言葉を使って社会人に質問する人がいます。「御社の社風について教えてください」などです。これは適切な質問だと言えるでしょうか?
私は、就活において「社風」をこのように質問してもわからないと思うのですよね。これだけでは「アットホーム」とか「明るい」とかそういうやり取りになってしまうわけです。良いことしかいいませんし。他社との違いもよくわかりません。
そもそも、「組織風土」と「社風」はニュアンスはちょっと違うのですよね。「組織風土」は「何をヨシとするか」という意味も含まれているわけで。普段の職場の雰囲気だけでなく、ビジネスにおいて何を大事にするかという話も大事なわけです。
だから、私は「社風はどうですか」という質問は要注意だと思うわけです。
社員の印象も大事だけど
「組織風土」を知る上で、社員の印象というものも大事な要素ではあります。何人か社員と会ってみた印象、共通点などは参考にはなります。この人たちと働きたいと思うかどうかも、です。
ただ、採用活動に出てくる社員は、所詮、会社が用意した優秀(だと言われる)な社員なのですね。だから、これだけで判断するのは危険です。また、単に社員の印象や共通点を見るだけではなく「なぜ、このような社員が集まっているのか?」「それは、ビジョンやビジネスモデルなど、企業の根幹となるものと関係しているのではないか?」という視点を持つとより良いでしょう。
単なる社員の印象だけでなく、その背景にあるものを考えてください。
商品・サービスを競合と比較してみる
この「組織風土」を知る上で、意外に参考になるのは、商品・サービスなどの比較です。業界内での商品・サービスのポジションを比較してみましょう。これによって、仕事において大事にするポイントは変わるわけです。どのように商品を作っているのか、売っているのかなどを調べてみましょう。
ここも着眼点の一つです。
インタビューを読み比べてみる
また、経営者や社員のインタビューも参考になります。就職ナビや、企業の採用情報のページにも掲載されていますし、参考になりますが、余裕があればビジネス誌の記事を図書館で検索する、ネットでインタビュー記事を検索してみるなどすると良いでしょう。採用活動とは関係なく、仕事に関する取り組み方、姿勢などを知ることができます。
この手のインタビューでは、各社の武勇伝が紹介されていることもあります。まあ、この手の話はもろもろ誇張されていたりもしますが、その企業が何を大切にしているかが分かるものです。参考にしてみましょう。
このように、経営者や社員の声は媒体を通じて知ることもできること、就職ナビ以外にも掲載されているということ(企業によってはむしろ就職ナビ以外の方が多い)を意識しておきましょう。
組織風土は、変化する? 事業部によっても違う?
なお、ここで意識しておきたいことは、組織風土というものはなかなか変わらないようで、時代によって変化するということもあり得ます。例えば、ビジネスモデルの変化、M&A、採用方針の転換、中途社員の増加、経営体制の変更(創業家が経営陣からいなくなるなど)、ワークライフバランス施策やダイバーシティーの推進などによるものです。その企業の組織風土として語られることが、徐々に変化するということも意識しておきましょう。
また、事業部によってまったく違うビジネスを展開している企業の場合、組織風土も部門によって違うということもあります。社員の話を聞く時は、どの事業部の人の話なのかを意識すると良いでしょう。
このように、よく語られているその企業の特徴が徐々に変化することもあるということをおさえておきましょう。
組織風土を知るために有効な質問とは何か?
最後に「組織風土」を知るために、社員に対してするべき質問について考えてみましょう。「組織風土の特徴について教えてください」という質問も良いですが、むしろここでは、「組織風土」という言葉を使わず、様々な角度から聞くのが良いと思います。
たとえば「同業他社と比較して、御社らしさとは何だと思いますか?」「御社で優秀だと言われる(若手)社員の特徴とは何ですか?」「仕事をする上で、御社の方が大切にしていることは何だと思いますか?」「会議の雰囲気はどのようなものですか?」「御社に合っている人、合っていない人の違いは何だと思いますか?」などの質問は有効です。
これらの視点で「組織風土」を理解し、自分に合った会社探しに取り組んでくださいね。
執筆者プロフィール
常見陽平@yoheitsunemi
評論家北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。