「学生時代にしかできないことをしなさい」と言うけれどそれって何だろう?

2014.10. 8  6742Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

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学生時代にしかできないこととは何か?



9月半ばに、東洋学園大学さんにお邪魔しました。就活を終えた4年生向けのセミナーをして欲しいという依頼があったのです。
これは、面白い取り組みです。4年生向けセミナーといえば、未内定者向けのものの依頼が圧倒的に多いのです。既に就活を終えた学生に向けて、残りの学生でするべきこと、社会人になるためのアドバイスを伝えるセミナーというのはなかなか珍しいですね。既に就活を終えて、達成感もあるからか、参加者は皆、良い顔をしていました。

社会人になるための心構えを話しましたし、参加者からは学生時代にしておくべきことを質問されたわけですが、そんなセミナーの講師をしつつ、「本当に学生時代にするべきことは、何なのだろう?」と自分自身、考えてしまいました。

内定式で社長はこんなスピーチをします。
「学生時代にしかできないことを一生懸命やりなさい」
人事担当者もそんなことをよく言います。少なくとも、私が人事をしていた頃はそうでした。もっとも、最近の内定者は研修が多めで、eラーニングで課題をやったり、企業によっては資格を習得することを促されたりして忙しいようですが。

この「学生時代にしかできないこと」とは何でしょうね。実は、一般的な言葉のようで、定義は曖昧だと思います。本日はこれについて、考えてみましょう。


社会人になるための準備も良いけれど



「学生時代にしかできないこと」と聞いて、私が思い浮かべるのは次のものです。

・長期間の旅行
・留学
・平日の休みを活かした遊び
・仕事と関係ない勉強、読書
・結婚と関係のない恋愛

まだまだありそうですが、この辺で。いかにもこれは、自由で時間のある学生時代にしかできないことのようです。ただ、よくよく考えると、社会人になってからも、できそうなものも多々あります。

よく学生らしいことの代表格と言われる長期の旅行も、ずっと会社勤めをしていても、夏休み、冬休みで9日前後の旅行は可能ですし、企業によってはたまにもらえる長期休暇も活用できるので、可能は可能です。転職などをする際に、充電期間として休みをとることも可能です。
仕事関係ない勉強、読書も本人の時間の使い方次第です。会社を休職して大学院などに行く人もいます。結婚と関係ない恋愛をしている人は、むしろマジョリティではないでしょうか。

こう考えると「学生時代にしかできないこと」というのは、極めて不思議なものに見えてきます。これはいったい、何なのでしょう?
実はこれは、時間や自由度の話ではなく、「22歳(くらい)」という今の年齢でしかできないこと、この時期に経験しておくべきことと考えた方が良いかもしれません。若いうちに、この体験をしておきたい、この景色を見ておきたいと考えた方が良いでしょう。結局のところ、あなたのやりたいこと、今しかできないと思うことをやれ、という話になるわけですが。

個人的には、海外を放浪する、卒論を一生懸命頑張るということこそ、学生時代にやっておくべきことなのではないかなと思います。それぞれ、22歳の段階で、見えないものをみたいという衝動をかなえた経験、自分の中の不思議について考え調べまとめるという経験は貴重だと考えるからです。
もちろん、社会人になるための準備期間でもあります。前述したように、企業から出される課題なども多々あります。卒論を通じて、進む業界のことを調べたいという人もいるでしょう。それもまったく否定はしませんが。

あなたが考える、「学生時代にしかできないこと」は何でしょう?チャットモンチーの「サラバ青春」には「何でもない毎日が本当は記念日だったって今頃気づいたんだ」という歌詞がありますが、実はなんとなくキャンパスに行き、学食で定食と缶コーヒーで他愛もない話をすることこそ、学生時代にしかできなことかもしれません。
大学生活を楽しみつくしましょう。応援しております。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。