転職のタイミングは、本当に今なのか?募集背景を確認せよ

2014.8.28  155Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


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このサイトの初期読者が、最初の転職をしている件



「いつやるの?いまでしょ」
昨年、ユーキャン新語・流行語大賞でグランプリとなった言葉の一つですね。今だと、言うのもやや恥ずかしいですが。
今日は、やや変化球で転職ネタです。
このサイトが立ち上がったのは2010年でした。早いものですね。
その頃は、就活をめぐる環境が実に厳しい時期でした。
あの頃、立ち上がったばかりのこのサイトを読んでいた当時の学生が、最初の転職をし始めています。
転職をするのは今がベストなのか。考えてみることにしましょう。
いま、入社2、3年目の方でこのサイトを読み続けて頂いている方、気の早い話ですが、将来、転職を考えている方、参考までにご一読を。


結論から言うならば、求人も回復傾向であり、転職しやすい環境ではあります。
求人が回復傾向である時期は、年収も上がりやすいですし、より従業員数が多い企業にも転職しやすいことが法則として知られています。
転職サイトや、人材紹介会社に登録している方は、以前よりもスカウトメールなどが届く回数が増えたなと感じる方もいらっしゃることでしょう。
Facebookなどでつながっている人が、転職報告をしているのを見かけることも増えたのではないでしょうか。


周りを見渡してみると、2010〜2013年くらいに大学を卒業した、新卒の就活の求人が厳しかった代の若者たち、このサイトの初期の読者が「明るい早期離職」をしています。メディアで報じられる、打たれ弱い、自己実現志向が強い、あるいはブラック企業に使い潰されるというような若者像とはまったく違い、今の職場が嫌いというわけではなく、ポジティブに、より条件のあった企業に転職。勤務先企業の知名度も、そして年収などの待遇も上がっています。
辞められた企業にとっては、たまったものではないことはないことは言うまでもないですけどね。



募集背景を理解せよ



さて、いいことばかりのような、今の時期の転職ですが、転職先を選ぶ際に、必ず確認しておきたいことがあります。
それは、「募集背景」です。
つまり、なぜ、その企業はその求人を募集しているのかという話です。
ここを理解せずに転職してしまうと、あとで苦労することになります。
なぜ、これを確認することが大事なのか?
ここを深掘りすると、転職先のことがよく理解できますし、将来、路頭に迷うことにならないか確認しておくことができるからです。

例えば、景気が回復に向かいつつある中でよくあるパターンは、営業マンの強化(という名の増加)が必要だということで大量に採用するというものです。
いかにも、景気の良い、勢いのある話ですね。
これ自体は、別に悪い話ではありません。
ただ、そういう場合、入社後にどんなことが考えられるのかを想像してみましょう。
営業未経験の人、あるいは、やったことはあるものの営業対象が違う人(法人か個人か、新規顧客か既存顧客か、単価が高額か低額か、そもそもの扱う商品の違いなど)が入社します。
営業課長たちは新しく入ってきた営業マンたちの育成に必死...。
よく言えば活気がありますが、悪く言えば混乱状態です。
しかも、景気が悪くなった後も、その営業マンたちは生き残ることができそうなのか、配置転換可能なのかという点も気になるところです。

同様に、気をつけるべきなのは、新規事業の立ち上げ要員というものです。
これらの部署は社内でも当たるも八卦当たらぬも八卦で、外様になりがちなわけです。
景気が良い時期は攻めの投資ということで、新規事業を立ち上げようとするわけですが、これがもし撤退ということになったらどうでしょう。
社内で行き場がなくなってしまうということも。

この募集背景ですが、人材紹介会社を通じて転職する場合は、求人を管理するシートに記入されていることも多いです。
あるいは、記入されていなかったとしても、人材紹介会社のキャリアコーディネーターや、転職先の企業の人事に聞いてみると、教えてもらえることも多いです。
ここはぜひ、確認してみましょう。

また、組織図を見て、自分が異動できそうな部署がないかということも確認しておきましょう。
いざという時に社内で他に身のふり場所があるかどうかというわけですね。
転職のタイミングは常に今であり、今ではない。
つまり、自分で決めるというわけです。

時期によってメリット、デメリットはあります。
特にこの募集背景というものは、求人が多く、浮かれ気味なこの時期に今一度、確認しておきたいところです。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。