採用とは営業である!内定辞退阻止のためにここまでやる
2014.4.30 6095Views
皆さん、こんにちは。常見陽平です。
内定辞退阻止は、採用担当者の腕の見せ所
4月も終わりです。
大手企業を中心に、内定出しが行われています。
今年は早いですね。そして、出る人にはたくさん出ていますね。
リクルートが発表した2015年度の新卒求人倍率は1.61倍。
売り手市場と言っていいレベルにまで回復していると言えるでしょう。
市場の変化の話は、いくつかのエントリーで書いてきたので、今日は小話的に、採用担当者は内定辞退を防止するために、どんな努力をしているのかというエピソードをご紹介します。
売り手市場になって、一部の学生には内定がいくつも出て争奪戦になる状態のとき、内定辞退を防止する努力は特に必要となります。
いや、ここ数年の求人が厳しい状況の時も、欲しいと思った学生を確実に確保するためにはどうすればいいかは課題となっていました。
採用活動の永遠の課題とも言えます。
内定辞退防止のために、採用担当者が取り組んでいることを、いくつかご紹介しましょう。
網羅的ではないですが、正攻法のものから裏ワザ、やや卑怯な手まで含め、本当に色々なやり方があります。
では、どうぞ。
●採用プロセスで志望度を高める
王道中の王道ですね。美しい採用というのは、会社説明会や、パンフレットやホームページなどの制作物、面接などで、最終面接に至るまでに徐々に理解度、志望度が高くなっていき、内定が通知される時には、学生も「ここしかない」と思っている、という。
これは、素晴らしいデートというか、愛の告白に似ていますね。両思いというか、互いにこの人しかないなと思うという。
これが理想型といえば、理想型です。
●劇的な内定出しを行う
社長が劇的に口説く、劇的なセリフで口説かれる、意外なタイミングで出す、などなどです。
口説くための名セリフを必死に考える人も。
ちなみに、いま、都内で配布中の『アスユニ』でも触れましたが、リクルートグループで伝説になっている採用の口説き文句の一つは、これです。
「君さあ、事業を興した人を取材するより事業を興して取材される人になりたいと思わないか」
早稲田大学出身の採用担当者が、早大生を口説き落とした言葉です。
その採用担当者とは、のちにリンクアンドモチベーションの創業者となる小笹芳央氏であり、その早大生とはマクロミルの創業者杉本哲哉氏です。
ともに、東証一部への上場を果たしています(マクロミルは今年5月に、上場廃止を予定)。
杉本氏は当時、全国紙の内定を持っていたのですね。
こんな劇的なセリフで口説き落とすというのもよくある手段です。
●社員と会わせる
これも王道ですね。デキると言われる社員に会わせて口説く、という。
採用担当者視点で言うと、社員と会わせるというのも、実は奥が深いのですよね。
単にデキる人と会わせるだけではダメです。
それぞれの社員に会わせる意味を考えなくてはなりません。
例えば、出身大学が一緒、その学生がやりたいと言っている仕事を担当しているというのに始まり、タイプが似ている、併願企業が一緒だったなどなど。
あるいは、説教する役、褒める役など、そこまで考えたりもします。
社員ではなく、社長・役員など経営トップ層に会わせるという手もありますね。
●懇親会を開催する
社員や他の内定者との懇親会を開催するというのもこれまた王道です。
前述した社員に会わせるフォローだけではなく、内定者とのつながりをつくるというのがポイントですね。
迷っている人も、ここで「この仲間とだったら働きたい」と思うという。もちろん、逆もありますけどね。
●職場見学をさせる
社内をみて、雰囲気を味わってもらい、納得してもらうというのも手です。
社員に会わせるというやり方と、セットで行いますね、これ。
希望の配属先のフロアを見せてあげるなどすると、テンション上がりますね。
ここまでは正攻法ですが、ここから、やや変化球編、黒い手段編です...。
●他社の辞退を強要する
「内定を出すから、いますぐここで他社をすべて断って」など、辞退を強要するパターンですね。
もっとじっくり考えさせろよと思うわけですが。
ただ、これが完全に悪と言えるかどうかでいうと、違うと思います。
採る側の論理としては、ここが君にとってベストなんだ、なんで決めないんだ、君が欲しいんだというわけですからね。
●脅す、泣かす
エスカレートすると、こういう手もあります。
まあ、なんでも情報がネットに出る時代で、よくないなあと思うのですけどね。
脅すはさすがに問題ですが、泣かして忠誠を誓わせるのは、たまに見受けられる手法ではあります。
考えの甘さなどを突っ込みつつ、自分たちがいかにその学生が欲しいかを語るという・・・。
なお、脅すといえば、内定辞退をしようとした人にクリーニング代を渡し、カレーやコーヒーをぶっかけるという話をたまに聞きますね。
実際、かけられた人と会ったことはないのですけど。
ちなみに、某大手証券会社には、たまに「カレーやコーヒーを学生にかけるって、本当ですか?」という問い合わせが広報に入るとか。
公式コメントは「そんな事実はありません」でしたが真相はいかに。
●拘束する、軟禁する...
最近はあまり聞きませんが...。
他社の選考に行かないように、旅行に連れて行くなどの手がありますね。
ひどい場合は、軟禁に近いかたちで、会社の会議室やホテルで拘束するという手も。これも最近は聞きませんけどね。
●親を説得する
これは、昔も今も実はよくあるパターンです。
親の影響力ってありますから。
親にお手紙を書くのはまだ序の口。親と飲みに行ったという採用担当者もたまにいますよ。
内定者の親向けの説明会なんていうイベントも。
親の理解は大事なので、納得して内定した後も、社内報を送る、会社が参画する見本市などに招待するなどの手もありますね。
正攻法のものから、荒っぽいものまで色々ありました。
まあ、賛否というか、批判的な声があるかと思います。
ただ、採る側も必死だということは頭に入れておきましょう。
あなたは、採用担当者を説得できるか?
ここであげた例は、普通に行われているものから、やや極端な例まであげました。
いつも言っていることですが、採用に関する方針というのは各社により違うわけで。
絶対に、ねらった人材は逃さないという方針の企業もあれば、去るものは追わないという方針の企業もあります。
学生の皆さんに理解して頂きたいのは、企業はこれくらいの勢いで、内定辞退を阻止しようとするということです。
あなたの意志はそれを上回るくらい強いのか、あなたは入社しようとしている企業を選んだ理由を他社の採用担当者に強く説明できるのか。
今一度考えてみましょう。
執筆者プロフィール
常見陽平@yoheitsunemi
評論家北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。