就活の歴史を振り返る!「花長風月」、そして売り手市場の思い出

2013.8.30  1134Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

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「花長風月」ってなんだ?


突然ですが、皆さんは「花長風月」という言葉はご存知ですか?

もともとの「花鳥風月」はこんな意味です。

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自然の美しい景色。また、自然の風物を題材とした詩歌や絵画などをたしなむ風流にもいう。
※三省堂「新明解四字熟語辞典」より
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でも、こちらの「花長風月」はよく見ると「鳥」が「長」になっていますね。

これは、
花:花形産業/長:長期休暇/風:社風がよい/月:月給が高い

これを略したものなのですね。
バブル期の1990年頃に流行った言葉のようです。
リクルートワークス研究所のレポート『「新卒採用」の潮流と課題-今後の大卒新卒採用のあり方を検討する-』(2010)を読んでいたときに、就活の歴史をまとめたページがあり、そこで紹介されていました。

改めて就活の歴史を俯瞰して気づいたことは、


●就活時期の見直しと、フライングの繰り返しである。

●求人倍率が改善されると採用活動がややフライング気味になり派手になり、悪化すると就職難が問題になる上、今まで大学生が行かなかった分野に行くようになる(業界・職種、企業規模が多様化する)。

●大学、学部および大学生の増加、産業構造の変化も進路の多様化に影響を与えている。

●内定取り消し、学業阻害などの問題は昔も今も起こっている。

●徐々に応募のスタイルが自由応募になってきている(時に反動が起こるが)。


このような変化が起こるということです。
特に、求人倍率が改善されると、今度は学生の取り合いになるのですよね。そうなると、学生の企業選びもやや贅沢になり、企業の採用活動も派手になるわけです。

売り手市場時代の思い出



就職難と言われたここ数年ですが、回復の兆しが見えてきています。
文部科学省の『学校基本調査』や、就職情報会社の内定率調査などを見ると、明確に回復傾向ではあります。
2015年採用も基本的には、ここ数年よりは明るくなりそうな予感です。
もっとも、企業の側でも学生を育てる余力もなく、誰でもいいから採用するという時代には戻らないかと思いますが。

売り手市場になると、どうなるか?
参考までに、00年代半ばの、求人倍率2.14倍が2年連続で続いた頃に採用担当者をしていた、私の思い出をお伝えしましょう。


●東京ドームで合同説明会が開催されていた。しかも、女子学生だけで東京ドームなんていう企画もあった。

●採用予算に6億円くらいかけていると言われていた企業が、知っているだけでも5、6社あった。金融機関など。合同説明会では、金融機関のロゴ入り簡易バックが全員に配られた。

●ワンデーインターンシップが大流行だった。早期接触するためのセミナーと化していた。

●各社、手帳など使えるグッズを学生に配布していた。

●ホームページがフラッシュなど使いまくりで、派手になっていった。

●「全員、面接に行ける」などを大手企業も売りにしていた。

●内定者合宿、内定者旅行に力を入れる企業が、大手中心に多数。

●学生からは、やたらと福利厚生のことを質問された。希望どおりの配属が通るかなども。年収1000万円をいつになったらもらえるか、40年間ちゃんと勤められるかなどもよく質問された。

●合同説明会などは雰囲気が明るかった。イベント感覚。実際、お祭りのようなノリを売りにしたイベント(リクルートのリクナビフェスタなど)も存在。

●当時から、インターンシップのハシゴをする学生などは一定数、存在していた。

●14社内定が出たという学生と会ったことがある。ここまでではないが、内定長者をよく見かけた。


まだまだありますが、このへんで。まあ、派手でしたね。イベントもいっぱいでした。
「何かおかしいんじゃないか?」そんなふうに、採用担当者としても感じていましたよ、ええ。

求人が回復しつつも、今後は、全体を派手にするのではなく、ターゲットをしぼって派手にアプローチするという手法がきそうな気がします。いや、実際きています。
というわけで、市場は盛り上がったり、盛り下がったりの繰り返しですが、「これでいいんだろうか」「どうせ、こんなことは長く続かない」というさめた視点を持つことも大事ですね。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。