「なぜ、電通じゃないの?」電博を通じて考える志望動機の限界

2013.6.14  21778Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。
 
 
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ひたすら甘っちょろかった私の就活


 
今日は私の就活の思い出話をしましょう。
 
ふと、就活の頃を思い出しました。
結局、新卒ではリクルートに入った私ですが、就活初期段階では主に、自分の学んだことを活かした進路と、自分の好きなことをやるという進路の大きく2つで迷っていました。
前者で言うならば、マーケティングや競争戦略論を勉強していたので、コンサルティング会社、広告代理店やメーカーのマーケティング部門を、後者で言うならばレコード会社や玩具メーカーを受けていました。
 
ちなみに、のちに採用担当者をすることになる玩具メーカーは、エントリーシートで落ちています。
その後、その企業で山のようなエントリーシートと格闘したわけですが。
人生は面白いですね。
その後、就活に関する講演・執筆活動をするわけですが...。
私の就活はいま思うと、途中までは典型的な「思い込み就活」で、勉強したことを活かさないといけないな、とか、自分の好きなことをやりたいなとか、そんなことで悩んでいたわけです。
 
まあ、人生こんなもんです。
 

博報堂が第一志望だった私は、電博をどう受けたか?


 
そんな中で、私の第一志望の業界は広告代理店で、中でも行きたい企業は業界1位の電通ではなく、業界2位の博報堂でした。
なんせ、会う先輩がいちいち魅力的で、かつアウトプットをみて、マーケティングとクリエイティブに強いという印象を受けたわけです。
自分と肌が合う感じがしました。
 
逆に電通は、「営業の会社」というイメージがあり、かつ、自分が会った先輩に関していうと、博報堂の社員の方が優秀そうに見えたのです。
いま思うと、肌が合っていると感じただけかもしれませんが。
 
実際、電通の選考はいとも簡単に落ちてしまいました。
面接官とも明らかに相性が合わなかったですし、業界1位の企業で、たくさんの資料があるにもかかわらず、あまり調べていませんでしたし、調べる気にもなりませんでした。
 
博報堂はとんとんと進んでいきました。
ただ、電博を受けた者が当時、誰でも経験した「なぜ、電通じゃないの?」質問に対しては実に、いい加減な答えをしていました。
結局、人の魅力と、思い込みレベルでのマーケティング、クリエイティブに強いという話しかしませんでした。
今思うと、これだけでいいわけがありません。より丁寧にビジネスの違いなどを見るべきでした。
 
また、会った社員の印象などは所詮思い込みなわけで。
ゼミの先輩の電通マンにOB訪問した際に調子にのって「博報堂の方が賢そうだ」「電通は所詮、体育会集団」などと失礼なことを連呼したら、当然、怒らせてしまったわけですが。
彼の反論はこうでした。
「おっしゃるとおり、電通には体育会人間も馬鹿もいる。でも、最も優れた人材は電通にいる」と。
逆に博報堂の先輩はこう言っていました。「電通というのは、好きとか嫌いとか、良い悪いを超えて"強い"会社なのだ」と。
 
ただ、最後は「一緒に働きたいかどうか」「肌が合うかどうか」が最も大事か、と。
 
結局、私はリクルートに入社することになるわけですが、これもその時点で「肌が合う」と思ったからです。
また、サラリーマンはどうせ自分の希望通りの仕事ができるわけでもないわけで。
成長できそうか、20代のうちに活躍できそうかという基準で選んだわけですが。
 
さらに言うならば、採用する側の論理から言うならば、志望動機が優れているかどうかよりも、極論、採りたいかどうかなわけで。
決まる学生というのは、いい加減な志望動機でも決まるわけですけどね。
 
話が拡散しましたが...。
いまは情報も多く、企業研究も私の頃よりはしっかりできます。
よく比較するべきですし、人の魅力だけにひかれるのは危険ですが、最後は「肌が合いそうかどうか」が最も大事な基準だと思います。
まあ、これだけがアピールポイントだと弱いですが。
 
さらには、志望動機が優れているかどうかよりも、その会社で活躍できそうかの方が大事なわけです。はい。
 
あくまで思い出話ですが、ご参考まで。
 
 

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。