「具体的お祈りメール」はありえるのか?採用は、実力では決まらない

2013.5.17  2063Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

 
 

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その「お祈り」、もっと具体的にならないのか?


 
「また、お祈りメールが届いた…」
 
大学の教え子たちからよく聞く話です。
このコラムを読んでいる方ならご存知でしょうが、不合格を伝えるメールの文末に、「末筆ながら◯◯様のますますのご活躍をお祈り申し上げます」とあることに由来するようです。
ここ数年流行っているのは「サイレントお祈り」というものです。
不合格の連絡すらない状態のことをさします。
まあ、その場合、相手が「今後のご活躍をお祈り」しているかどうかも分からないわけですが。
 
さて、ここで考えてみたいと思います。
お祈りメールはもっと具体的にならないものか?
もっと言うと、不合格の理由を学生に伝えることはできないのか?
 
皆さんは、不合格の理由を知りたいと思いませんか?
まあ、ここは学生においても、賛否両論あるところだと思います。
別に知りたくもないという人もいることでしょう。
 
「実際、不採用の理由って知ることができるものなの?」
 
そんな疑問もあることでしょう。
ライフネット生命が今年の1月に発表した「新卒採用関係者の意識調査」によると、「応募者に対して公開している情報(複数回答)」の中で、12.1%の企業が「不採用の理由」を伝えていると答えています。
わずかではありますが、取り組んでいる企業はあるということですね。
 
ちなみに、採用基準などに関わるポイントでいうと、「選考基準」48.4%、「過去の採用実績」41.6%、「採用フロー」40.7%でした。
「不採用の理由」に比べるとハードルが低そうですが、とはいえ開示しているのはこれだけです。
 
なお、これは裏付けるデータはありませんが、中途採用の場合だと、不合格の理由はちゃんと教えてくれる率が高いように感じます。
あるいは、明らかに条件に合わなかったのだと、なんとなくわかります。
 
新卒は中途に比べると不透明ではありますが、教えている企業が存在することは事実ではあります。
実際、企業から不合格理由を教えてもらったという学生に会ったことがありますが、非常に納得感があったとのことでした。
 
「具体的お祈りメール」というかたちではなかったのですが、このように不合格の理由を教えてもらうということは納得感にはつながりそうではあります。
 

採用基準はいい加減である


 
とはいえ、今の新卒採用のやり方において、すべての企業で全員に不合格理由を通知するのは無理があるでしょう。
 
運用上、数万人の応募者に不合格理由を伝えるのは難しいです。
通知したところで、それに対する問い合わせ対応などは、まさに気が遠くなる作業になりそうです。
 
また、不合格理由については、伝えるとしても全員というよりは希望する人というのが、学生側にとっても、企業側にとっても現実的だと言えるでしょう。
というのも、聞きたくもない人もいるわけで。
気をつけないと、ますます心が折れることでしょう。
 
運用上で言うと…。
ややぶっちゃけ話になるのですけど、企業の採用基準というのは、大学入試ほど明確ではないのですね。
 
不合格の理由も、全体のバランスを考えて迷った末に営業に適性のありそうなAさんを選んだ結果Bさんは落ちたとか、決め手がなかったとか、わからなかったとか。学生にはとても伝えられない理由があることも事実です。
結局、伝える理由がますます表向きの理由になる可能性もあるわけで。
 
ここでも、日本の採用はその人のスキルや経歴だけでなく、人柄を採用しているということが明らかになるわけですが。
不透明なお祈りメールですが、当分は「なぜダメだったんだろう」と自分で想像するしかなさそうですね。
 
「具体的お祈りメール」あなたはどう思いますか?
 

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。