就活後ろ倒し?どうなる、2015年の就活

2013.4.15  8873Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




就活はいつから後ろ倒しになるのか?




いま、就活関連の話題といえば、政府が検討している就活の後ろ倒し案です。
就活のための採用広報スタート時期を大学4年の4月に、選考は夏にという案です。


この件については、アゴラやWEBRONZAで書きましたのでご覧ください。




「就活の時期を遅らせよう」では学生も企業も救われない(アゴラ)




「"就活4年生解禁"経団連が政府要請受諾」の茶番 偉い人たちよ、不毛な時期論争はさっさとやめなさい




今回はこの件が本当に実行されるのか、いつから実行されるのかということについて考えます。
まず、実行されるか否かでいうと、政府の要望を受けて、経団連や経済同友会が本格的に検討するのは間違いないでしょう。
ただ、いつからやるのか、どうやるのかについては、今後、議論を呼ぶことでしょう。
大胆に推測することにしましょう。


経団連は2013年度採用より採用広報活動開始時期を大学3年生の10月から12月に後ろ倒ししました。
その際に米倉会長のコメントなどでも、再度、見直すには効果を検証しつつ行うという意向を明らかにしていました。
今回、急ピッチで見直し論が進んでいるものの、2015年度採用からいきなり移行しないのではないかと私はみています。


実際、いくつかの新聞の報道では、文部科学省は2015年度からの移行には難色を示していました。
こういうことはもしやる場合、強引にでも進めた方がまとまるのでしょうけど、いきなり2015年度というのはないのではないかと私は見ています。


また、本当に4月スタートになるのかどうかも、今後議論を呼ぶことでしょう。
先日、このテーマで語り合う採用担当者、大学関係者、人材ビジネス関係者の意見公開会(という名の飲み会)を開いたのですが、そこで出た意見では「大学3年生が終わる頃の2月スタートになるのではないか?」という見方が出ました。
ちょうどテスト期間が終わり、春休みという時期でもあり、やりやすくはあります。
もっとも、大学は入試シーズンということもあり、学内セミナーをちゃんと開催できるかどうかという問題なども起こります。
数年かけて段階的に移行する可能性もあることでしょう。


まだ正式には何も決まっていないわけですし、経団連米倉会長の容認コメントにも不透明感があるのですが、元々の案通りにすぐに移行することはないのではないかと私は見ています。
あくまで推測ですけどね。




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後ろ倒しになるとどうなるかについてのぶっちゃけ話






では後ろ倒しになるとどうなるのかについて、昨日の意見交換会で出た声も盛り込みつつ、私の推測というか、意見をお伝えしますね。






<就活後ろ倒しに関して、考えたい論点>






1.理想の時期というのは、そもそもないという現実




学業と就活のスケジュールは、そもそも大学、学部、学科、地域、業界や企業規模によって違います。
統一した利害調整は不可能です。


理系の場合は、後ろ倒しは実はむしろ学業阻害になります。
卒論などをどうするかという問題も(まあ、学部の卒論など重視しないというならそれまでですが)。
就活の早期化、長期化について問題提起し、2011年度採用から選考時期を大学4年の夏に後ろ倒ししたキヤノンマーケティングジャパンも、2014年度採用では理系のみ前倒ししました。
むしろ、この方が学業を阻害しないからです。
まあ、他社に遅れをとりたくないという本音もあるかと思いますが。


また、大事な論点として、教育実習をどうするかという問題があります。
そう、民間への就職を希望していても、教員免許は持っていたいという学生はいますからね。
後ろ倒しをどこまでするかによりますが、もろにぶつかってしまう可能性も。


卒業後就活は、大学生活を充実させるためには理想ですが、生活のための資金をどうするか、いまのフリーター問題で起こっているように生活にやっとの状態になり就活をする時間がなくなるという問題も。
また意欲が続くかどうか自分にちょうどいい企業に気づくタイミングがどんどん遅くなるという問題があります。


だから、時期論争というのは、難しいのですが。やや思考停止、暴論に聞こえるかもしれませんが、すべての学生が満足する理想の時期なんて、そもそもないのです。




2.抜け道はいっぱい




そもそも倫理憲章は法的拘束力はありません。
何度も言っていることなので、詳しくはアゴラのエントリーを参照してください。
また、外資系企業、ベンチャー企業をはじめ、大手でも賛同しない企業が登場することはあり得ます。


抜け道もいっぱいです。
おそらく企業は、インターンシップと、就活とは一見すると関係ないビジネスコンテストなどのイベント、Facebookページなどのグレーゾーンのツールを強化することでしょう。
経団連の倫理憲章は選考につながるインターンシップを禁止していますが、これも実態は...。


青田買い的なものはよりはびこるでしょう。




3.後ろ倒ししても学生は勉強しない




勉強しても短期的に得しない構造になっていることがそもそも問題です。


就活などで学業における成績が判断に使われるわけではないですし。
一部の大学を除き、落第リスクも低いですし。




4.とはいえ大手と有名大学の優秀学生は困らない




倫理憲章改訂のときもそうでしたが、決まる企業、決まる人はすぐ決まるという構造は変わりません。


中堅・中小企業と普通の学生が大変に。
現実に目覚める時期も遅くなりますし。




5.学生は、勝手に動き出す




倫理憲章が改訂され、後ろ倒し
になった後も、就活のことは気になるわけで。
3割くらいの学生は大学3年生になってから意識し始めて、勝手に就活につながることを始めるわけです。




というわけで、今回、政府の要請に経団連が容認姿勢を示した(これも怪しいのですが)のは、実は互いに困らないからではないかと勘ぐってしまうわけです。
ポーズだけ、というか。人気取り、というか。
時期だけの議論は意味がないです。
出会い方、雇い方などを見直しましょうよと、何度も言っていることですが、私は思うわけです。










この問題なども含め、就活ネタで、4月16日にニコ生をやります。
毎月、飯田泰之先生とやっている「饒舌大陸」です。
ゲストは経済学者 田中秀臣先生です。
ぜひ、ご覧ください!


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。