学生に求める力第1位、「コミュ力」はそろそろやめよう!

2012.8. 9  4502Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




今年もコミュ力が一番なのだけど




少し前になりますが、経団連が新卒採用に関するアンケート調査を発表しました。


新卒採用(2012年4月入社対象)に関するアンケート調査結果の概要(一般社団法人日本経済団体連合会)


学生に求める力は今年もコミュニケーション能力が一番でした。
9年連続で1位です。
この調査結果もそうですが、ネット上の学生や大人たちの反応もみて、思わずため息でした。


この調査結果に対して思うこと、ツッコミどころはこれまでも何度も発信してきました。
取り急ぎはこのエントリーを読んでください。
コミュ力が必要だと言われる背景、この調査自体の問題、本当に求められている力などがまとまっています。


まあ、要するに私が言いたいことはコミュ力が求められる世の中であることは間違いないが、この調査方法自体の問題でコミュ力が最も必要とされている力のように出てしまう、今、求められている力はむしろ主体性、チャレンジ精神、突破力だということです。


ここ数週間も大学や自治体で講演する機会が何度もあったのですが、個別に質問してくる学生、よい質問をする学生、堂々と質問し、人の話を聞ける学生に限って「コミュ力に自信がない」と言い出すわけです。


あなた、十分、あるじゃないですか。


そして、以前も指摘したとおり、コミュ力を自分からアピールしてくる学生のコミュ力はたいてい普通以下です...。


これもまた、悩ましい問題で、私も含め大人たちが「コミュ力が大事だ」と発信するが故に、その言葉がひとり歩きしたり、「コミュ力があると言えば内定が出る」というように思われたり、学生がそう演技したりするんですよねぇ...。




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そのコミュ力は何力か?




これも以前から指摘していることですが、「コミュ力」というくくり方も危険だなあと感じます。
発信力、傾聴力、会話力、あるいは言語コミュニケーション、非言語コミュニケーションなどいくつかの分解の仕方がありますし、もちろん企業、職種によって求められる力のバランスには違いがありますよね。
よくグローバル化の時代なので、英語力が必要だという話になりますが、日系企業・外資系企業それぞれで国内、国外の勤務を経験した方によると、最も求められるのは英語での会話というよりも、読み書きの力が大事なのですよね。


グローバル人材って誰?英語の迷信に振り回されるな!


中には、「それはコミュ力ではないでしょう?」というものがコミュ力と括られていることがあります。


ある大手飲料メーカーのリクナビの画面を見ていたのですが、明らかにチームワークに関すること(まぁ、これも広義ではコミュ力と重なるのですが)、推進力、実行力、主体性にあたることを含めてコミュ力と表現していました。


学生が「結局、求められるのってコミュ力なんですかね?」と相談してきたので気づきました。


まぁ、厳密にはよくみるとそうとは言い切っていないのですが、そう誤解されかねない表記でした。


ここでの1つのヒントは...。


○○力というのは、一度、お休みして、その企業のその業務を想像してみることですね。
想像だけでは妄想になりかねないので、やはり先輩などに聞くのが一番ですが。
業務を想像したときにどんな力が必要なのか、コミュ力が必要だとして、その中でもどんなコミュ力なのかを想像してみるほうがよっぽど有益です。


しかし...。
そろそろ、コミュ力重視の一人歩き、やめにしませんかね?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。