新社会人よ、初任給で焼肉屋でレバ刺しを頼んでみよう

2012.4. 9  1316Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


4月です。
マスメディアでも、ネットでも「新入社員」ネタのニュースや、フレッシャーズに向けた熱いメッセージをよく見かけます。
このエントリーでは、「初任給」をテーマに「新社会人」あるいは「サラリーマン」について考えてみたいと思います。




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社会人になったと感じるのは焼肉、寿司、タクシー




「社会人になった」と感じる瞬間といえば、「初任給」です。
私も今から15年前の4月下旬に、会社のフロアで事業部長から給与明細を渡されたことを覚えています。


まだ振り込まれる前なのに、パーッと行きたくなり、同期と一緒に焼肉屋に行きました。
高くて不味い店だったのですが、「社会人になったんだなあ・・・」と実感したのでした。


そう、当時は牛角なども店舗が広がっておらず、焼肉は先輩におごってもらう他はめったに食べられないものだったのです。
社会人になったなと感じたのは、自分のお金で焼肉や回らないお寿司を食べるようになったこと、そしてタクシーに乗る機会が増えたことです。


焼肉に関して言うと、普通のカルビやタン塩ではなく、上カルビ、上タン塩を食べるようになったこと、さらにはユッケやレバ刺しなどを食べるようになったのも社会人になってからです。
特にレバ刺しは、あの透明感あふれる艶のあるルックス、口に入れたときの食感、官能的な舌触りがたまりません。
あっという間に胃袋めがけて超特急はやて号です。
人はレバ刺し好きで生まれるのではありません。
レバ刺し好きになるのです。


このように、焼肉は、そして中でもレバ刺しは月給取りになったことを実感する通過儀礼なのです。




レバ刺し禁止令をどう捉えるか?




そのレバ刺しですが、ご存知の通り、2012年6月にも法で禁止されることになる模様です。
元々、90年代にもO-157の関係から生食用のレバーの加工基準が策定され、見直しがかかっています。


今回の発端は、昨年に焼肉屋チェーンでユッケで食中毒になり死者が出たことが影響しています。
そもそも、その焼肉チェーンの管理はずさんもいいところだったわけで、これを基準にジャッジするのもいかがなものかと言いたくなります。
たしかに、牛のレバーには食中毒リスクがありますが、これだけを槍玉にあげるのはどうなのでしょうか?
逆の見方から言うならば、危険があると断定するなら、そんなものをずっと放置してきたのもズサンであると言わざるを得ません。
食の安全ということを言うのなら、私たちの普段食べているものがすべて安全だと言えるのでしょうか。


日経は4月4日付の社説にて大批判を行いました。
また、J-CASTニュースでは、規制することによってかえって裏メニュー化するリスクを伝えています。
焼肉屋で出したものを生で食べられるリスクもあります。
この事例は、新入社員にとって「官」とは何かを考えるよい事例だとも言えます。
短絡的な規制で場当たり的に対応する、何でもルールで縛ろうとする。これが日本の「官」なのです。
いや、役人も一人ひとりは良い人なのですけど、組織になるとおかしくなるものなのです。


ふぐ料理のように免許制にして残すのはどうでしょうか。
私も禁止まで、焼肉文化を後世に伝えるべく、できるだけレバ刺しを食べるようにしたいと思います。


レバ刺しはすでに昨年から厚労省から自粛が呼びかけられており、現在は提供している店舗も減っています。
ただ、まだ食べられる店はあります。
冒頭で書いたように初任給で行く店といえば焼肉屋なのですが2012年新卒は初任給で焼肉を食べた最後の世代になる可能性があります。


「新社会人よ、レバ刺しを食べなさい」と言いたいのですが、「食中毒になったらどうするんだ!」と激怒する方もいることでしょう。
あくまで案として、そんなメニューがあることをご提案しておきます。


新社会人の皆さん、初任給をもらったらもちろん、保護者への感謝を忘れずに。私はテディベアを母親に買いました。
今も実家に飾ってあります。


お金のありがたみを噛み締めましょう。


私もお金のありがたみを体感するべく、レバ刺しを噛みしめたいと思います。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。