ユニクロ型か、ソニー型か 新卒採用の多様化は止まらない

2012.1.10  2683Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




大学1年から就活か、卒業してから就活か




新卒採用をめぐるニュースが続々です。
昨年の暮れにユニクロ(ファーストリテイリング)が大学1年生も含め選考することや新卒と中途を一本化して採用することが話題になりました。
「大学1年から採用対象とするのか」と話題になり、賛否両論を呼びました。


◆参考記事:新卒一括採用廃止の先に希望はあるのか?




先週は、ソニーの採用活動が話題になりました。
採用対象を多様化し、既卒3年以内もエントリー可、職務経験のある第二新卒層も対象にするというものです。
選考方法、コースも多様化し、服装も自由というものです。この件については、アゴラに寄稿しましたので、そちらもご覧ください。


愛と幻想のソニーらしさ 就活改革の曖昧な不安(アゴラ)


やや辛口な記事になっていますが、私は「"ソニーらしい"とみんなが反応したけれど、それってどういうことなのよ」ということを言いたかっただけです。
このように多様化していくのはいいことだと考えています。


第二新卒も一緒に採用するという点は比較的新しいなと感じています(もちろん、とっくに取り組んでいる企業はありますが)。
新卒の就活で不本意入社だった人、合わなかった人も再チャレンジできるわけですね。
もっとも、その後の処遇はどうなのかと、今いる企業に残った方が得じゃないかなど、考えるべきポイントはあるかと思いますが。


先日のエントリーのように、経団連が「倫理憲章は来年も一緒」「慎重に検討する」と言いつつ、新卒採用は多様化してきます。
これをメディアは「新卒一括採用崩壊」などと煽りたがるわけですが、AかBかという話ではなく、多様化し、チューニングされていく流れだと解釈しています。


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ますます問われる大学の意義






ユニクロの件でよく言われたのは、「大学をバカにしていないか?」という話ですね。


高校生でもいいじゃないかとか、学業阻害ではないのか、などの意見がありましたね。
報道でのコメントでは、1年生からゆっくり育成するので、逆に学業を阻害しないのではないかという意見を見かけました。
私もそう思います(これもまたやってみないと分からないのですが)。


やや、極論ですが、これは「日本の大学ってどうなのか?」という大きな問いかけなのではないかと感じています。
何でも「学業阻害だ」という話になるわけなのですが、実は企業も、そして学生も大学には付加価値を期待しておらず、ラベルしか求めていないのではないか、と。


最近、識者の方と議論した際に、就活の長期化、早期化で学業阻害だと言ったところで、実は日本社会がそもそも勉強しても得しない社会になっているのではないかというご意見を頂きました。
就活で成績を聞かれることはありませんし、評価の基準も曖昧ですし。大学の教授も講義を面白くしたところで、あまり得をしない、と。
学生も「単位」が欲しいのであって、「A」や「優」を欲しいわけではありません。


対するソニーの取り組みですけど、実はこれも大学に対して厳しい施策なのではないかと思っています。
「いや、既卒者でもOKと言っているのだから、学生は大学生活を満喫できるのでは?」と考えることでしょう。


ちがいます。ますます、大学生活の中身が問われます。
大学も学生も、「就活があるから」という言い訳が通用しなくなるわけですね。


いずれにせよ、今後、大学の存在意義、付加価値は問われ続けることでしょう。




出会い方をどう変えるかという視点




ここでもう一つ触れておきたいのは、ユニクロの件も、ソニーの件も、時期と対象という意味では画期的ですが、別にすべての学生対して優しい施策ではないのです。


むしろ、学生時代にいかに成長するかということが問われる施策だと感じています。
また、学生と企業の出会い方という意味では、想定の範囲内です。


よく、この手の議論は新卒一括採用か否か的な議論になるわけですけど、出会い方をどう変えるかという議論、いずれにせよ苦労するであろう半分の学生たちをどうするかという議論をするべきですね。


学生と企業が就職情報会社を通さずに出会える仕組み、先輩社員と学生の個人同士の出会いを加速する仕組み、就職先が決まらない学生を育成する場、企業とマッチングする場を用意することなどです。


学生の就活も混乱するでしょう。


「企業の足並みが揃わないと学生は決められない」と言うかもしれませんが、足並みはもう二度と揃わないのではないでしょうか。
グローバル時代の自由競争とはそういうことです。
だから、決まらない学生のためのセーフティーネットが必要なのですが。


学生はどのスタンダードを選ぶかという覚悟が必要な時代だと言えるでしょう。




皆さんはどう思いますか?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。