バリキャリか、ゆるキャリか?どうする女子の働き方
2011.9.12 5466Views
こんにちは。常見陽平です。
慶應義塾大学98年卒 一番笑ったのは誰?
突然ですが、皆さんは『スタンド・バイ・ミー』をご存知ですか?
スティーブン・キング原作の映画です。
伝説の俳優、リバー・フェニックスが出演していたことでも知られています。
私も大好きな映画で、5回くらい見ましたかね。
青春映画なのですが、決して美しいものではなく、人生の皮肉を感じさせるところが好きです。
今の学生の皆さんが生まれる前の映画なので、見たことがない方もいらっしゃることでしょう。
夏休みの終わりにぜひ、ご覧ください。
ややネタバレですが、最後のシーンのナレーションが好きです。
「あれから、○○は...」
という風に、登場した人物のその後を紹介するわけです。
さて、皆さん、気になるかと思いますが...。
大学を卒業後、十数年経つとどうなるんでしょう?たまたま、そんな話を聞きました。
98年に慶應を卒業した女性から、当時の同期がどんな進路を選んで、現在に至るのかということです。
そのとき、興味深かったのは、「周りで一番幸せそうな人は誰?」と聞いたところ、
「総合商社に一般職で入った女性」という返事が返ってきました。
理由は、「日本型スローキャリアを満喫している」からだそうです。
年収もよく、福利厚生もばっちり。一般職だけど仕事は面白い。
結婚、出産もし、楽しく働いているとか。
その方は、「私は辞められない、いろんな意味で」と言うそうです。
こんなおいしい環境は捨てられないという意味と、
他に行っても通用しないことがわかっているからという意味が両方込められていました。
なるほど。
当時は、上位校を中心に「女性は総合職になるもの」という空気がある中、
慶應を出て一般職の道を選んだ彼女。現在は幸せそうだったとか。
では、他の皆はどうだったか?
優秀だと言われ、周りから尊敬されていた人はベンチャー企業に飛び込んだものの、
想像以上の激務と不安定な環境ですっかり疲れてしまったとか。
逆に、明らかにやる気がなく、なんとなく大企業に入った人は、すっかり意識が変わって、バリバリと活躍しているとか。
もちろん、転職を繰り返し、キャリア漂流している人も。
もっとも、これはあくまでかなりざっくりした振り返りにすぎず、統計的観測ではなく、茶飲み話に過ぎないのですが。
でも、進路の選び方、女性の働き方についての示唆に富んでいる話ではあります。
いずれにせよ、働かないことは、リスクであるということ
進路選びについて、毎年、学生が今の時期、議論するのは大企業かベンチャー企業か、
総合職か一般職かという議論です。
それぞれ、学生でわかる情報は限られていますし、企業によりますし、
検証ポイントがあまりに多いので「こっちに行くべき」とは言い切るのは極めて危険です。
もっというと、キャリアというのはアップもダウンもなく長く続くものなので、
短期・中期・長期で考えなければなりません。
後者の総合職か一般職かという議論については、上位校の学生を中心に
「そりゃあ総合職でしょう」という風に思いがちですが、そうではありません。
実は昔からですが、早稲田や慶應でも一般職志向の女子は一定数います。
昨年の秋、ワセジョたちに受けた相談でも「総合職なのか、一般職なのか」というものは、
最も多い質問の1つでした。
最近、男女雇用機会均等法制定に関する番組を見る機会と、関わった方の話しを聞く機会があり、
総合職で働くということは先人の並大抵ではない努力の結晶なのです。
ただ、大学のキャリアセンターなどに聞いてみても、
皮肉なことに一般職や地域限定総合職を志す女子学生は増えているとのこと。
少し古いですが、『働きマン』に代表されるようなバリキャリの働き方に賛同できない、
長く働きたいという志向の表れでしょうか。
個人的には、日本における女性の管理職の割合がアメリカの約40%に対して、
日本は10%程度に過ぎないことに危機感を抱いており、総合職で就職し、管理職になる女性が増えて欲しいなとは願っていますが。
ただ、いずれにせよ言えるのは、「しなやかに長く働く」という発想はどの女性にも必要です。
結婚難、その後は配偶者の年収減リスクに、離婚リスク。
白河桃子さんの『「キャリモテ」の時代 』(日本経済新聞出版社)での意見に影響を受けているのですが...、
これらを考えると働き続けないことはリスクです。
どうやったらしなやかに長く働き続けるか?
この視点を持ちたいところです。
執筆者プロフィール
常見陽平@yoheitsunemi
評論家北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。