学生も企業もインターンシップ自慢はやめなさい

2011.8.12  31995Views

こんにちは、常見陽平です。


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ルールが変わる中、曖昧な不安を抱く学生たち




「インターンシップに行くべきでしょうか?」


ここ数ヶ月、こんな質問をよく頂きます。
まぁ、先日のエントリーに書いたとおり、インターンシップも含め、夏休みの過ごし方くらい決められない学生はどうかと思うのですが、
とはいえ、皆さん気になることでしょう。


「インターンシップに行けば就活が有利になるのですか?」
「選考と兼ねているのではないでしょうか?」
「インターンシップで落ちたら、本番の選考でもNGなんでしょうか?」
「実習中に粗相があったら、本番の選考でも不利になるのでしょうか?」


こんな不安が渦巻いているのではないでしょうか。




そんなインターンシップですが、今年から日本経団連の倫理憲章の変更がありルールが変わりました。
職場受け入れ型インターンシップを前提とすること、ワンデーインターンシップなどはしないこと、
選考など採用活動にはつなげないことなどです。


倫理憲章にサインしていなくても、就職情報会社のインターンシップ告知サイトの参画ルールも変わったので、それ以外の企業もこのルールに合わせる流れがあります。


他にも、キャリア形成支援の側面があること、
採用を前提としないことから1年生から参加OKにする流れもあります。




インターンシップに限らず、新卒採用のルールは劇的に変わろうとしています。




個人的にはその多くは「本当に学生のためになるのか?」と首をかしげてしまうものも多数なのですが。


一学生としては、環境が変化する中、自分たちにとって本当は何が嬉しいのかを主張しつつ、
制度や慣行はすぐには変わらないので、その中で自分はどう動くかを考えるべきですね。






インターンシップってどうなのか?


個人的にインターンシップは、「興味があるなら行った方がいい」くらいに思っています。


大学などはインターンシップに行くことをすすめていますし、私も大学教員をしている立場としてその気持ちもわかりますが、
最終的には学生個人が決めればいいんじゃないですかね。


採用担当者になりたての頃、私はインターンシップに関して複雑な心境を抱いていました。


採用活動が終わっていないのに、急いで夏のインターンシップを準備し、告知活動・・・。
そして、各社のインターンシップのプログラムにクビをかしげることも。


例えば論文大会や、1日インターンシップ、
新商品開発コンテストなどは職業体験という意味でのインターンシップと言えるのだろうか、
会議室に閉じこもって社会人との接点がほぼないものをインターンシップと呼べるのか、
あまりにもその企業の普段の業務とかけ離れていないか、などです。


そもそもこの存在が就活の早期化をすすめているのではないかとも考えていました。
というわけで、インターンシップについてはずっと疑問、問題意識を抱いていました。


ただ、女子大の先生になってから、やや考えが変わりました。


たとえワンデーであっても、職場体験とかけ離れているものでも、
「企業や社会人との接点がある」という点では意味があるのではないかと考えるようになりました。


学生のタイプにもよりますが・・・、本当に大学生は社会や企業、社会人との接点がないのですよ。


実際の職場や、社会人の生活がイメージできないまま就活をむかえ、
憧れだけで企業選びをしたり、まるで企業のことをわかっていない自己PRをするわけです。
まだ、これでもあった方がいいんじゃないかと思うようになった次第であります。


そして、インターンシップを経験することが成長のキッカケになったりすることもあるわけです。


もっとも、インターンシップだけで夏休みが終わるのはどうかと思いますし、別に強制的にやれという話でもないかと。


他にも成長の機会はいっぱいありますし、数少ない休息の機会ということで、「積極的にだらだらする」のも手だと思いますよ。
オススメはしないですけど。
中には選考と直結している企業(インターンシップからしか採らない企業も...)もありますが。


あくまで自分の意思で行くものではないでしょうか。
だから、周りの意識の高い学生wwwがインターンシップにがっついていても、
「自分は自分」と考える勇気も必要です。




受け身の参加は意味がない そして趣味:インターンシップの痛い学生たち


さて、これからインターンシップに参加する学生にくれぐれも言いたいことは、
ずばり「受け身で参加するな」ということです。


そもそも仕事というのは、与えられるものではなく自分でつくるものです。
指示待ちにならず、自分から先手、先手で仕掛けていきましょう。


いま、自分がするべきことは何か。
これを常に考えてみてください。


昔から違和感を抱いていたのは、インターン評論家学生ですねぇ。


ワンデーインターンも含め、夏休みはインターンシップをハシゴ。
「○○社のインターンは結構なものでしたなぁ」などと評論するわけです。


気持ちはわかりますが、インターンシップのプログラムは与えられるものではなく、一緒につくっていくものですからねぇ。
いくら優れたプログラムと評価されていても、参加する姿勢によって変わりますからねぇ。


そして、インターンシップばかりしていないで、自分の好きなことをやりなさいと言いたいです。
まぁ、趣味:インターンシップなのかもしれませんが。
学生のインターンシップ自慢ほど痛いものはありません。


「おれ、○○のインターンシップ受かっちゃったゾ!」
「○社のインターンシップに参加したけど、すごかったゾ!」


気持ちはわかりますが、別にインターンシップに参加できたからと言って内定が出るとは限りませんし、
えらくもなんともありません。


また、インターンシップのプログラムが優れているからと言って、あなたが優れているわけではありません。
痛いインターンシップ自慢はそろそろやめましょうよ。




そのプログラムは、その企業とかけ離れていないか?


企業のインターンシップをめぐる姿勢に関してもクビをかしげることがあります。


いや、インターンシップに一生懸命なのはいいことだと思いますよ。
各社とも優れたプログラムをつくるために魂かけています。
時間とお金をかけています。
中には、企業で研修として受けたら30万円はかかるだろうというプログラムさえあります。


ただ、企業のインターンシップのプログラムをみていて違和感があるのは、
あまりにもその企業の実態とかけ離れているものですかねぇ。


気合と根性で仕事をしまくる企業が、まるでビジネススクールのようなプログラムを実施していることも。


いや、とてもパワーをかけて取り組んでいるのでしょうけど、実態と違いませんか、と。
インターンシップがある意味、浮いていて、社風や仕事内容も何も体感できないものってどうなのだろうかと思うわけですよ。
学生もバカではないので、気づきます。


「あの会社、インターンシップが有名だから参加してみたけど、ウリがインターンシップだけっていう残念な会社だなあ・・・」
「インターンシップは面白いけど、すぐれたビジネスモデルの会社じゃないよなぁ」


という風に。
思えば私が学生の頃、インターンシップをやっているのは外資系企業くらいでした。
それに比べると、夏休みの過ごし方の選択肢が多様なのはいいことだと思っています。


企業や社会の実態を知るよい機会ですし、成長のキッカケにもなるでしょう。






でも、インターンシップだけやっているのも痛いよっていうことに気づいてください。
そして、学生も企業も不毛なインターンシップ自慢はそろそろやめにしましょう。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。