夏休みの過ごし方すら決められない就活難民予備軍たちにおくる7つのヒント
2011.8. 9 26171Views
こんにちは、常見陽平です。
「好きに過ごせ」と言われても、そりゃあ、就活のことは、気になる
「夏休みはどう過ごせばいいんでしょう?」
3年生から、こんな質問をよく頂きます。
ホンネでは「夏休みの過ごし方くらい、自分で決めなさい」と言い切りたいです。
約20年も生きてきて、このくらいの目標設定、計画立案くらいできないのは学生としてどうかと思います。
別に就活をしようがしまいが、社会生活をする上でどうかと思うのです。
なんてことを書いたら、俗流若者論ではないかとか、無責任な若者批判だと言われそうですが。
いや、それでも私は、「これくらい決められる人になりなさい」と考えています。
目標設定できない、計画を立てられない、決められない、やると決めたことをやり切らない...。
就活対策をしてようがしていまいが、この姿勢こそが立派な就活難民予備軍じゃないかと。
一方、皆さんが決められない理由もよくわかります。
そりゃ、就活のことが不安になりますよねぇ。
就活の早期化・長期化とそれによる学業阻害が問題となり、採用広報時期の後ろ倒し、
インターンシップの見直しなどが行われました。
ナビサイトの本格オープンも12月になります。これは美談のようで、学生の皆さんを不安にさせるだけですよね。
むしろ12月以降によく分からないままに嵐のようにセミナーが多数開催され混乱するのではないかと懸念されています。
企業も、大学教職員もますます就活難民が増えるのではと懸念しています。
そもそも有名大学を出たから雇用が約束される時代でもないですし、「勉強しろ」と言ったところで、
やり方も分からなければ、適切な評価の仕組みもないのも事実です。
そんな中、まわりが就活対策を始めたり、インターンに行き始めたりして焦るわけですよね。
あるいは、「就活のネタ作り」とばかりに、周りの友人が被災地ボランティアに出かけたり、
何かスゴイことをしようと動き出して焦るわけです。私のもとにも日々・・・
「やっぱり、被災地ボランティアは行っといた方がいいですか?」
「インターンシップに参加した方が有利ですか?」
「海外旅行するならどこがいいですか?」
「この時期に資格を取るとするならばどれがいいですか?」
「本当に就活対策なしで夏休みを過ごしていいのですか?」
などという相談がよく来るわけです。
大学は時間の使い方を教えてくれない
そもそも、就活があろうとなかろうと、学生の8割くらいは時間の使い方が下手というか、知らないんだなぁと感じます。
これを言うたびに「それは大学で教えることか?」と言われますが、
現実を考えるともっと日本の大学は、勉強の方法、そして学生生活、さらにはその後の社会生活のための基礎スキルを教えるべきではないでしょうか。
よく「ギャップイヤー導入で日本の学生は変わる」などという議論があります。
私も人生には余裕を持って自由に行動し、考える時間が必要だと同意しますが、
ただ、夏休みの過ごし方すら決められない現状の学生の多くには無理なんじゃないかと感じます。
自由の追究。これができる若者は昔も今も少ないですねぇ。
いや、もっと言うと日本人に自由は無理なんじゃないかと思う瞬間がよくあります。極論ですが。
もっとも、諸々前提の変化により、変わるのでしょうけど。
もろに中年の愚痴になってしまいました。
では、夏休みの過ごし方が決められないアナタのために、いくつかのヒントを提示しますね。
1.自分の心の声を聞きなさい
「夏休みは好きに過ごしなさい」と言いつつ、そう言われても何もデキませんよね。
一方、就活のことを気にし過ぎて悶々として過ごすのも嫌ですよね。
で、結局、中途半端に過ごすと後悔したり、便利な悪者である就活のせいにしてしまったりします(これまた無責任ですねぇ)。
大学時代の夏はかけがえのないものです。
後で後悔するのはよくないです。
やりたいことがいっぱいあって困る人も、やりたいことが見つからない人も、まずは自分の心の声を聞きましょう。
周りの評価や、就活の不安はいったん忘れて
「いま、何したいんだろう?」
これだけを問いかけてみましょう。
思いついたことは漠然としたものでもいいので、書きだしてみましょう。
書いた瞬間「無理・・・」「夢のようだ・・・」と言う人もいるでしょうけど、本当でしょうか?
何いにせよ、皆から協力してもらう、親からお金を借りる、気合と根性で乗り切るなど、あらゆる手段を使って可能になることも。
そもそも社会に出ると、諸々のしがらみや制約があるものです。
自由に発想しましょう。
2.時間管理、優先順位付けを学びなさい
「時間がない」「やりたいことがありすぎて時間が足りない」と言う学生がよくいます。
本当でしょうか?実はたいてい、そういう人に限って時間は余っているものですよ。
まず、自分の可処分時間を明らかにしましょう。
自由に使える時間です。予定表とにらめっこして、数値化しましょう。
あとはやることの管理ですね。
毎朝、やることを書きだして、優先順位付けするクセをつけましょう。
できれば10分~30分はかけたいところです。
自分がいかにムダな時間を使っているか、気づくはずです。
「私、時間の使い方、下手・・・」
そんな人は手帳を先輩に見てもらうのもよいでしょう。時間の使い方のアドバイスをもらいましょう。
3.具体的に、具体的に、具体的に考えなさい
最近、夏休みの計画を立てるワークショップで講師をしています。
学生の立てる計画はたいてい激甘です。
学生同士で共有してもらうと実に和気あいあい盛り上がっているのですけど、話を聞いてみると、具体性、実現性のない目標と計画を褒めあっているだけ。
ある学生は「夏休みにSPIを完璧にする」という目標を立てていました。
「完璧ってどういうこと?」「全問正解です」「いま、どんな感じ?」「非言語はボロボロです」「あと40日でなんとかなるの?」「・・・」というような会話になるわけです。
具体的な目標設定、計画立案が必要ですねぇ。うるさいくらいに、具体的にすることにこだわりたいです。
4.社会と会社と自分のことを知りなさい
就活でやるべきことがあるとするならば、早期に選考がある外資系企業や一部のベンチャー企業を受ける人以外は、まずは業界・企業研究と自己分析の基礎をやるとよいでしょう。
そんな大げさなことではなく、社会と会社の現実を知ること、そのための情報収集の基礎を知ること、そして自分の歩みを振り返ることくらいでOKかと思います。
おそろしく社会のこと、会社のこと、自分のことを知らないものですよね。
まずは新聞とビジネス雑誌を読むことを習慣化しましょう。
毎週見る経済番組を1つ、設定するのもいいでしょう。
ミーハーな選択で構わないので1社に対して詳しくなってください。
あとは、自分史の振り返り。特に何が強みなのか、何を大切にして生きてきたのかを考えましょう。
5.やると決めたら、やりきりなさい
目標を設定し、計画を立てたら、やると決めたらやりきってください。
ついつい甘えがちになるのが、学生の悪いくせ。
まぁ、目標と計画にそもそも無理がある場合もありますが。
1つで構いません。何かやりきってみましょう。
やり切るために、そのための時間を最初から用意してブロックする、周りの仲間にコーチしてもらうなど、どうやったらサボらずに、折れずにやり切ることができるかを考えましょう。
6.一皮むける体験をしなさい
ぜひ、一皮むける体験をしましょう。
それってどういうことなのか?詳しくは『仕事で「一皮むける」』(金井壽宏 光文社新書)をご参照頂きたいのですが、
高いレベルの目標に立ち向かう、スゴイ人から刺激を受ける、異なるものと触れ合う・・・などを通じて大きく成長、変身して欲しいのです。
どうやったら自分が劇的に成長できるか考えてみてください。
くれぐれも言いたいのは、一見すると頑張っているようで、まるで意識高いのではないかという勘違いさんにならないこと。
ボランティアやインターンも行けば必ず成長するわけでも、楽しいわけでもありません。
もっと言うと、就活が劇的に有利になるわけでもありません。
自分から前のめりに取り組むこと、どうやったら一皮むけるかを考え続けてみてください。
7.振り返りにこそ力を入れなさい
やりっぱなしはよくないです。振り返りこそ大事です。
目標、計画に対してどうだったのかを振り返ってみてください。
この振り返りという取り組み、学生はたいていしないのですよねぇ。数字、事実をもとにしっかり振り返りをしましょう。
さいごに
少しだけフォローすると...。
夏休みは別に就活のネタ作りのためのものではありません。
何度もコラムで触れてきましたが、別に就活はネタの自慢大会ではありませんからね。
人生を生き抜くために、自分の道を強くするために、心技体を鍛えるのです。せっかくの大学生活ですし。
あと、「就活に有利になりそう」という理由でボランティアに出かける学生をみると正直、複雑な想いになるのですが...。
少しだけ彼らを擁護するならば、下心から始まる真心だってあると思っています。
やや話はズレますが、最初は下心からでも、そこから化ける人っていますからね。
モテたいと思ってギターを始めて、でもだんだんはまって、途中からモテなんてどうでもよくなって、ひたすら上達してプロになる人なんかもいるわけですからね。
そもそも、夏休みの過ごし方にルールなんてないわけです。
でも、今後のこと(就活のことではなく、人生のこと)を考えて、目標設定、計画の立案、PDCAを回すことくらいは実践して欲しいなと思ったわけです。
就活のための夏休みで終わらせるのは私も反対です。
人生にとって大切な、大きく成長、変身する夏休みにしてください。
皆さんが楽しい夏休みを過ごせることを祈っています。
執筆者プロフィール
常見陽平@yoheitsunemi
評論家北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。