どうなるソー活?(1) 達人学生と残念な企業たち
2011.6.30 2368Views
こんにちは、常見陽平です。
どうする、どうなる、日本のソー活
「ソー活はブレイクしますか?」
ここ数ヶ月、こんな質問をよく頂きます。
ソー活とは、ソーシャルメディアを活用し、双方向で行う就活、採用活動のことです。
結論から言いましょう。
「すでに一部ではブレイクしているが、失速する可能性も」
「ソーシャルメディアを使いこなす学生・企業、そうじゃない層と極端に2極化する」
「残念な使い方も増える(増えている)」
これが私の答です。
一部は答になっていないとの説もありますが。
学生、企業の動きをレポートしつつ、今後の展開を予想しましょう。
ソー活学生増加中?
「ソー活はキテいるか?」ということについて言うならば、間違いなく広がりは見せていると感じます。
まず、学生側の動きについて考えてみましょう。
感度の高い学生のソーシャルメディア活用はどんどん進化していると感じます。
2011年度採用においてはTwitterの活用が盛り上がりをみせ始めた時期でした。
各社の経営者、人事担当者、社会人、就活生のアカウントをフォローして情報を得たり、
時には話しかけてOB・OG訪問をお願いする。
そんな活用が普通に行われるようになってきました。
ある意味、タテ・ヨコ・ナナメの人間関係を簡単に構築できるようになったのは
Twitterのおかげと言えるかもしれません。
就活に限らず、これを活用して経営者や評論家などにアポをとったり、
講演の依頼をする学生もいますね。
学生主催の就活イベントもTwitterで拡散し、あっという間に満席ということもよくある光景でした。
そして2012年度採用においてはFacebookの活用が盛り上がりをみせました。
学生に限らず、日本でFacebookが盛り上がり始めたのもまさに2010年の秋頃でした。
それこそ、勝間和代さんのようなオピニオンリーダーが使い始めて一気に広がった感があります。
コンセプトや使用目的は違うものの、最近では急速にTwitterからFacebookに人が移っているように感じます。
リクナビがFacebookと連携したことも、影響は与えているでしょう。
これでOB・OG、就活仲間を探すなどに活用されました。
リアルな場で会った学生にリンク申請したり、情報交換するなど、いかにもSNSという使われ方もされました。
中には、企業の人事に目につくように、自分のプロフィールを工夫してつくりこんでいる学生、
自分のアカウントとは別にFacebookページを立ち上げる学生さえいました。
積極的に取り組んでいる学生たちは、活用法も極めて洗練されているなと感じます。
使いこなしている学生は、ツイート一つとっても洗練されていると感じます。
もっとも、すべての学生がソーシャルメディアを活用しているわけではありません。
この手のツールは使いこなせる層と、そうでない層に極端に二極化します。
率直な感想なのですが、学生に限らずFacebookをやっている人は比較的高学歴層が多いなと感じます。
自分の学歴、職歴を自信を持ってかける層が中心だなと感じています。
企業がソーシャルメディアを使う理由、使わない理由
企業側はどうでしょうか。
企業のソーシャルメディア活用はキレイに2極化していると感じます。
いや、冷静に言うならば、まだまだ活用されていないというのが実情です。
ソーシャルメディアを新卒の採用活動に利用している企業には、次のような理由があるかと思います。
・(現状は)学生の中でも優秀層、感度の高い層が使っている
・特にITに強い学生、海外経験者から利用が始まったので、その層にアプローチできる
・学生とダイレクトに、双方向でつながることができる
・企業姿勢などを伝えやすい
・優秀な学生をこちらから探しにいける
・早く立ち上げられる(ただ、それなりのITリテラシーが必要 外部に依頼することも)
・安い(ただ、これも一部、デザイン、開発などでコストがかかることも)
・検索されやすい
・話題性があり、注目されやすい、ニュースになりやすい
・学生の動きをモニタリングできる
特にここ数年、新卒採用は「分母型採用」から「分子型採用」にシフトしています。
「○千人の母集団を集めた!」という争いから、どれだけ精度の高い、最適な規模で、
採用ターゲットとなる母集団にできたかという点にこだわるポイントがシフトしているのです。
現状は比較的、ターゲットとしたい層中心に広がっているFacebookは親和性が高いと言えるでしょう。
一方、FacebookやTwitterなどを全く活用していない企業もあります。
特に大手企業はそうです。
どうしてでしょうか。
簡単に言うと、使うメリットを感じていない、使わなくても困らない、使うことのリスクが気なるということでしょう。
ここに手間暇をかけなくても母集団は形成できる。
さらには、学生とダイレクトにつながることによる炎上リスクなども気にしているのでしょう。
結果として、この手のツールはIT系のベンチャー企業を中心に広がっていると感じますし、
実際、活用しているのはそのような企業が多いと感じます。
そして、学生がそうであるように、企業側も活用している企業においては、
ノウハウや取り組みがどんどん洗練されていってます。
応募者へのメールの送り方、コーナーの作り方、投稿の文章、メッセージの発信の仕方など、
実に絶妙だと感じることがあります。
ソーシャルメディアを使う学生の気持ちや動線を分かっているのです。
次は...「どーなるソー活?(2) 残念なソー活、でもブレイクする理由」に続きます。
執筆者プロフィール
常見陽平@yoheitsunemi
評論家北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。