「社員の方に惹かれまして」と言われても、まるで説得力がありません
2011.3.10 22252Views
こんにちは、常見陽平です。
企業選びの決め手や、志望動機などで
「説明会で会った社員が魅力的だった」という話をよく聞きます。
この言葉から考えると、企業社会は実は極めて魅力的な世界なのではないかとすら思えてきます。
一方、いまや誰もがこう言うので、
本当に魅力的なのだろうかとクビをかしげてしまうこともあります。
そもそもなぜ、社員は魅力的に見えるのか?
より説得力のある伝え方とは何かについて考えてみたいと思います。
説明会で会う社員が魅力的に見える3つの理由
まず、なぜ説明会で会う社員が魅力的に見えるのでしょうか?
答えは3つだと考えています。
◆1つは、学生によっては、そもそも社会人との接点がないので、
このような場に出てくる社会人が素敵にみえてしまうからです。
鳥が最初に動くものを親だと思うことに近いと言えば、近いでしょうか?
例えば、OB・OG訪問をしない学生は6割いるのです。
社会人と会ったことがないので、
その人が実態よりも素敵にみえてしまうのです。
先輩社員を過度に評価しないためにも、たくさんの社会人に会っておいた方が良いのです。
◆2点目は、説明会や選考などに現れる社員は、学生にとって魅力的な人が選ばれているからです。
いくら仕事ができても、学生に対する印象が悪い人は会社説明会には出しません。
◆3点目は、説明会、選考などに参加する社員はトレーニングを受けていることです。
そこで、人事部や外部のトレーナーから
「こんな話をしてほしい」
「こんなことは絶対に言ってはダメ」
などの指導を受けているわけです。
とはいえ、「社員の魅力」も大切な着眼点
とはいえ、「社員の魅力」は企業を選ぶ上での大切なポイントのひとつではあります。
実際、説明会や選考で登場する社員は、入社先を決める上での強力な決定要因になっています。
新卒で入る企業は「何をやるか」よりも「誰とやるか」が大切なのです。
気持ちよく働くためにも肌や空気が合うことはとても大切です。
OB・OG訪問や説明会、選考で、社員と肌合わせをすることによって、
合うか合わないかを判断していきましょう。
もっとも、これだけではなく、ビジネスモデルが優れているか?
ビジョン、強みなども調べてみるべきなのですが。
「社員の魅力」を語る上で気をつけたい3つのポイント
では、志望動機などで「社員の魅力に惹かれて」と伝える際に気をつけるべきポイントは何でしょうか?
◆1点目は、社員のどこの部分を魅力的だと考えたのかを具体的に言うこと。
「社員が魅力的で」だけでは伝わりません。
いや、実際、本当にそう話す人がいるわけですよ。
言動、その人の仕事などから感じたことを伝えましょう。
◆2点目はその背景にあるものを考えること。
なぜ、その人が魅力的なのか?
そこには、企業のビジョンに共感する人が集まっているからだとか、
人材育成のしくみ、仕事の任せ方などに起因するものがあるはずです。
今一度、考えてみましょう。
◆3点目は、自分が考えたことを話すこと。
例えば、自分はその社員と会ってどう感じたのか、
自分もその社員のようになりたいと思うのかどうか、
同じような力を持っていると感じるかどうか、などです。
「社員が魅力的で」と言いっぱなしになると、
やはり前回ふれたような「片思い志望動機」と一緒になってしまいます。
◆「一方通行で"好き"と言われても...」中学生の告白みたいな志望動機はやめよう
社員をよく見て、考え、自分の言葉で語りましょう。
執筆者プロフィール
常見陽平@yoheitsunemi
評論家北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。