「そんなサラリーマン、いねえ!」漫画、ドラマで描かれる職業にダマされるな

2011.2.24  2041Views

こんにちは、常見陽平です。
最近、はまっている本があります。
『サラリーマン漫画の戦後史』(真実一郎著書 洋泉社 新書y)です。


『課長島耕作』『サラリーマン金太郎』『釣りバカ日誌』など、
サラリーマンを描いた漫画を、時代背景などをもとに読みといていくというものです。
たしかに、サラリーマンを描いた漫画はたくさんありますね。


ちなみに、私は島耕作シリーズの大ファンで、全巻持っているだけでなく、
『島耕作クロニクル』というガイドブック的な本まで持っています。
このクロニクルは島耕作の女性関係の分析など、かなり秀逸なのですが、
就活のコラムなので深くは語らないことにしましょう。


島耕作は課長から始まり、
部長、取締役、常務取締役、専務取締役と昇進を重ねるとともにタイトルを変え、
現在は社長編が連載中です。


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世相を反映するサラリーマン漫画






この『サラリーマン漫画の戦後史』でも解説されていますが、
初期の島耕作は社内政治に巻き込まれつつも、
様々な女性との恋愛(一時期は不倫)を楽しんでいましたが、
部長編では関連会社出向や左遷も経験。
その後は徐々にビジネスガイド漫画になって行きましたね。


グローバル化、M&Aなどビジネストピックスもしっかり盛り込みつつ、
団塊世代のリストラなども描いています。
まさに、世相を反映していますね。


サラリーマン漫画は、ビジネスの世界を覗き見する上では参考になります。
特に島耕作シリーズは、ビジネス誌の漫画版のようになっていて、
最新事情を楽しく把握するにはうってつけです。


私も中国やロシア、インドでのビジネスや、
M&Aについて島耕作で紹介されていた話は理解するヒントになりました。






サラリーマンのリアルとは違うことを認識しよう!






ただし!


サラリーマン漫画を読む際に気をつけたいのは、
これらは世相を描写しつつ、サラリーマンの気持ちを代弁したものにはなっていますが、
サラリーマンのリアルと同じかというとそうでもありません。


島耕作ほどモテる社員を見たことはないですねぇ。
ある大手企業の人事担当役員は「あれは、お伽話だね・・・」と評価していました。


島耕作のモテ度はともかく、個人的にいつも首をかしげるのは、
「なぜ、サラリーマン漫画にはデキる営業マンが出てこないのか?」ということです。


サラリーマン漫画に出てくる営業マンは、ひたすらむさ苦しく押しが強かったり、
逆に顧客にペコペコしていたり、実に極端です。


いや、営業にそういう側面があることは否定しませんが、
「この人はデキる!」と思える営業マンは、人の話を聞いて課題を把握できる人であり、
価値のある提案をする人です。


その点を描いた漫画が少ないのは実に残念です。




サラリーマン漫画は、社会を理解する参考にしつつ、
本当はどうなのかはぜひ、社会人の話を直接聞いて考えてください。










執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。