業界研究:医療業界編(医薬品・医療機器)
2010.12.15 9422Views
こんにちは、編集部スタッフです。
今回は業界研究 医療業界編です。
身近なようでちょっと分かりづらい医療業界を紐解いていきます。
業界について
日本の医薬品市場は、7兆円規模(2008年)。
その売上の9割弱を医療用医薬品が占めます。
医療用医薬品とは、病院に行った際にお医者さんが出す処方箋に基づいて出される薬です。
また、残り1割が一般用医薬品であり、町でよく見るドラッグストアや薬局で販売している医薬品です(OTC、市販薬とも言います)。
全世界の市場で見ると、市場規模は80兆円(2006年)1位はアメリカ(シェア約50%)。
それに次いで日本は2位の市場規模です。世界の医薬品市場は現在も5~7%成長をしています。
また、食品メーカーも医薬品事業に参入しており、キリンビールや明治製菓、日本たばこ産業等、食品で培った開発技術を活かして、事業を展開しています。
現在の状況
世界では、アメリカが伸び悩む中、新興国市場(中国、ロシア、トルコ等)が成長を牽引しています。
日本は、世界市場でのシェアは年々減少しており、徐々に国内市場は停滞化するともいわれています。
とはいえ、今後も高齢化社会が進むこともありますが、世界第2位の市場であるため各メーカーとも力を入れており、競争力強化のため研究開発投資の増強や医薬品業界再編が進んでいます。
知っておきたい用語・知識
◆医薬品開発に関して
医薬品を研究開発するには、研究開始から承認を取得するまで15~17年と長い年月がかかります。
候補となる化合物が医薬品になる成功確率はわずか0.009%と低く、候補となる化合物を見つけても、市場に出る医薬品になるのはわずか0.13%。
1つの医薬品を開発するための開発費は260億~360億円、期間は11~12年と言われています。
◆ジェネリック医薬品
CMでも耳にしますが、「後発医薬品」と言われ、特許の切れた医薬品を、他メーカーが製造し出来た薬のことを指します。
医薬品の開発には莫大な費用と膨大な時間を必要とするため、新薬を開発した企業は、新薬に関する情報について特許権を取得し、自社で一定期間販売することによって資本の回収を行います。
しかし、特許が切れた薬品(特許出願から20年)は、他の企業も同じ主成分を持つ医薬品(ジェネリック医薬品)を製造販売することが出来るようになります。
ジェネリック医薬品のメリットとしては、開発費が抑えられるので安価に販売出来ること、安全性や有効性が既に確認されているので承認が早いこと。
デメリットとしては、主成分は同じでも製造工程等が違うため、同じ効用が得られない可能性があることなどがあります。
◆進む業界再編
海外企業の進出に伴い、強化策の一環として国内の製薬業界は再編・統合を繰り返しています。
また海外市場でも再編が進んでいます。
[日本国内]
・05年4月 山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬へ
・05年10月 大日本製薬と住友製薬が合併して大日本住友製薬へ
・07年4月 三共と第一製薬が合併して第一三共へ。その後ゼファーマを吸収合併
・07年10月 田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併して田辺三菱製薬へ
[海外市場]
・09年1月 ファイザーのワイス買収
・09年3月 メルクのシェリング・プラウ買収
職種について
◆MRとは?
MR(Medical Representative)は、医療情報担当者と言われ、
医療に関する情報を扱う者のことです。
MRが扱う情報とは、担当する医薬品に関する効用や副作用、処方例や学会の最新情報、新薬の宣伝等であり、これを医療に従事する者(医者や看護師、薬剤師)に情報提供・収集する役割を担います。
薬を納品するのはMSと言われる医薬品卸であり、MSと連携して医療従事者へ営業活動を行います。
MRは専門知識を持って薬の販促活動を行うことによって医療従事者に薬を認知させ処方してもらい、また副作用情報を収集したものを他の医療従事者へ伝えることにより、多くの患者を救う一端を担うことになります。倫理観が問われるのはこのためです。
また、お医者さんは時間がありません。
3~5分の短い時間の中で相手に合わせた内容を的確かつ簡潔に伝える能力が必要となります。
MRは接待が多いのでは...?という不安を聞きます。
確かに以前はそうだったのですが、年々減ってきているようです。
人の命に関わる仕事なので、医者が選ぶ薬が接待で左右されてしまうのではなく、しっかりとした情報の元、処方してほしいですよね。
トップのファイザーは接待を禁止にするなど業界としてもだいぶ無くなってきています。ただ、メーカーにもよるとは言われていますが...。
業界について
医療機器業界とは、医療機関で使用される病状診断、治療、予防用の装置・機器・用品を扱う業界です。
例えば、MRIや内視鏡システム、心電計などの機械から、皆さん馴染みの注射針、ガーゼなどの消耗品まで様々な商品があります。
市場規模は生産金額が約1兆7000億円、輸入は1兆900億円。
商品群が膨大な量になるため、医療機器を専門に取り扱う商社も多くあります。
日本の売上高ランキングを見ると、精密機械のメーカーも一事業として参入していることが分かります。
例えば、業界第一位のオリンパス。
カメラで有名なメーカーですが、技術を活かして医療用内視鏡や生物顕微鏡の事業も行っています。