ドワンゴの受験料徴収は「悪」なのか?就活解禁前後の気になるニュースより

2013.12. 2  1210Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

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いよいよ就活スタート 冷静さと情熱を忘れずに


いよいよ就活解禁です。
まあ、この12月1日解禁というのは、経団連の倫理憲章により決められたものであり、すべての企業が賛同しているわけではないですし、法的な拘束力はないわけですし、実際、採用広報活動の取り組みは各社がもう始めているのですけどね。

とはいえ、就職ナビもオープンし、合同企業説明会や、各社のセミナーも始まり、就活シーズンは本格化していきます。

毎年、この時期になると、意識の高い訓示親父たちが、「頑張れ」とか、逆に「就活、新卒一括採用はけしからん」みたいな話を始めるわけですが、私は、ほぼ365日、日々就活のことを研究したり、情報発信をしているので、いまさらそんなことをするつもりはありません。いつものように、就活する学生を応援したいと思っています。

就活に関するニュースや、ノウハウなどは、この就活の栞や、読売新聞の連載「常見陽平の仕事道」で発信してきましたので、ぜひこれらのバックナンバーも読んでみてください。書籍で言うと、新卒採用の事情については最近リリースした『「就社志向」の研究 なぜ若者は会社にしがみつくのか (角川oneテーマ21) 』(角川書店)と『女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座 (中公新書ラクレ) 』(白河桃子氏との共著 中央公論新社)ノウハウについては、この就活の栞を書籍化した『困ったときに本当に使える 就活のヒント100 』(マガジンハウス)と、『本当に使える就活・実践本 』(園田雅江氏との共著 主婦の友社)を手にとってみてください。

就活については、自分と社会・業界・企業の現実を知る、未来を考える、一歩踏み出す勇気を持つ。これが大事です。「本当はどうなっているのだろう?」と疑問を持つこと、嫌なこと、理不尽なことについても「なぜそうするのだろう?相手の論理から言うと、合理的じゃないか?」などと考える癖をつけるといいでしょう。
あとは勇気ですね。そして、一人でやらないことですね。

応援しております。




ドワンゴの受験料徴収にみる、リクナビ型就活への抵抗


さて、最近の就活に関するニュースから気になるものをいくつか解説しましょう(今後は、このような、就活ニュース解説のコラムを増やしていきます)。

まずは、ドワンゴの受験者から受験料を徴収する取り組みです。

ドワンゴ、新卒入試で受験料を徴収へ--「本気の方だけ受験してほしい」(CNET Japan)


「学生から金をとるのか、けしからん」という声もあるでしょうが、私は一企業の取り組みとしては正しいと思います。
本気の受験者が増えるでしょうし、何よりも、リクナビ型就活の弊害とも言える、母集団の肥大化を避けられますし。お金を払ってでも受けたい人を取り込むことができます。これでお金儲けをしようというのなら怒る人は増えるでしょうけど、全額寄付すると言いますし。母集団を最適化するための、良い取り組みだと言えるでしょう。

大学受験や、資格試験はお金を払い、それが普通だと思われています。やや意地悪な言い方をすると、特に大学などは落ちる学生の受験料で大儲けしているわけです。でも、これを批判する人はあまりいませんよね。就活は、基本無料で受けることができますが、大企業、人気企業は1万人をこえる応募者のデータを管理しなくてはいけないわけで。お金も手間もかかっています。ただ、無料で受け付けているのに、企業側は批判されるわけですね。もちろん、企業の未来をつくるための活動ではありますが。
というわけで、「本気の人を採用したい」という意味でも、母集団を最適化したいという意味でも、この取り組みは合理的なのではないかと思います。

ただ、一つ、突っ込むとしたならば、このスタンスはどちらかというと、「選考」つまり、応募してきた人の中から選ぶという態度が見え隠れしたものではないかと解釈できます。「採用」つまり、欲しい人を採りに行くというスタンスではないのかな、と。特にドワンゴのように、ウェブ系の企業は、優秀なIT人材の争奪戦をしているわけで、そこはもう、まるで狩りのような様相を呈しているわけです。待ちの姿勢で大丈夫なのかなと思ったりもしました。まあ、他社が争奪戦に疲弊する中、逆張りの戦略とも言えますが。

この取り組みにより、採用は成功するのかどうか、学生からどう評価されるのか。注目したいと思います。



2015年採用のキーワードは女子の積極採用?そして、採用は会社を変える


もう2つ、こちらは手短に紹介したいと思います。
1つは電通、資生堂など大手9社が取り組んだ「汐留女子会」というイベントです。
概要などはこの記事にまとめましたのでご覧ください。

電通・資生堂・SBが組んだ「汐留女子会」が就活の流れ変える(NEWS ポストセブン)

要するに大手9社で合同の女子限定イベントをやるということです。
女子の積極採用というのも、ここ数年のトレンドだと感じています。
いや、以前は「総合職採用」と言いつつ、また、選考の際に「女子の方が優秀」と言いつつ男子を優遇するなどしていた企業があったわけですが、最近はなりふり構わなくなっているなあと感じます。男性社会と言われていた企業の内定者の顔ぶれをみても明らかに女子率がアップしています。
また、大手9社が組んでというのもポイントですね。
就活の開始時期が繰り下げになる中、採用活動は学生の時間の奪い合いになっています。学生との接点を有効につくる上で、有益だと言えるでしょう。学生も一気に、適度な数の企業を見ることができますし。実は極めて合理的に考えた採用だと思った次第です。

2つ目はリクルートのIT人材を別枠で50名採用というニュースです。

リクルート、ネット技術者の採用枠 15年春入社から50人(日本経済新聞)

このニュースの注目ポイントは、採用活動というのは、ビジネスモデルの変革にも関わるということなのですね。
同社はこれまで、広告型のビジネスモデルだったわけですが、このIT技術者の大量採用は、現状のビジネスにおけるITの強化だけでなく、ビジネスモデルの転換も予感させるものです。

また、そもそも、IT技術者の候補生というのは、採用しづらいのですね。リクルートも本腰を入れはじめたということでしょう。
採用活動というのは、このように企業戦略にも連動しているのです。

これから採用活動に関するニュースは増えることでしょう。企業の取り組みには必ず意図があります。表向きの説明を鵜呑みにするだけでなく、「なぜ、こんなことをするのか」ということを考える癖をつけましょう。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。