「貴社の商品が大好きです!」好き、入りたいだけでは志望動機にならない

2012.2.10  36100Views

こんにちは、常見陽平です。


志望動機をどう書くか。
きっと学生の皆さんも悩むことでしょう。


今回は志望動機の原則をお伝えしましね。




「御社が好き」というだけの志望動機






「とにかく御社の商品が大好きなんです!」
「御社の社員の方がとにかく素敵で、一緒に働きたいなと思っていまして」


実は人事からしてみるとうんざりするような志望動機です。
そして、毎年、こんな志望動機をいう学生が山ほどいるのです。
申しわけないですが、こんな志望動機では内定は厳しいですね。


気持ちはわからなくはないですが、こんな志望動機は誰にでもいえることです。
差がつきません。


選考で問われるのは「あなたが、これから活躍しそうかどうか?」であって、「会社を好きかどうか」ではありません。


もちろん、企業によっては内定辞退率を下げたい、意欲を確かめたいということもあります。
特に採用困難企業や採用数を絞っている企業では、内定辞退率はできるだけ下げたいと考えるものです。
しかし、「入りたい」ということに重きを置く採用は危険なのです。


もちろん、最後は口説き落として向こうから「入りたい」といわせるのですが、採用担当者は「入りたい」と思う人よりも、「ほしい」と思う人を採用するべきなのです。
「ほしい」人材に応募させ、口説き、入社させるのが人事担当者の役割であり、最初から「入りたい」といっている人間を採用するだけでは素人なのですね。


「入りたい」「好き」というだけの志望動機を人事担当者は掃いて捨てるほど読んだり、聞いたりしています。
エントリーシートの添削をしていても、そんな内容を山ほど読みました。
よっぽど自分が優秀でない限り通らないのが現実。
「好き」というエントリーシートを書く人は、実は仕事のことをよく理解していません。


特に旅行、食品、エンタメ系の商材など自分が普段から触れあっている好きなものや、マスコミ系などに顕著ですね。


「夢、感動を届けたい」というエントリーシートを玩具メーカーで人事をしていた頃によく読みました。
おそらくエンタメ系企業を受ける人は、誰でもこんな志望動機を書くのですが、「夢や感動を届ける」ためには、少子高齢化で玩具売場が減っているなか、問屋や小売店と地道に交渉しなければならないことを知っているのでしょうか。
問屋は文字どおり、在庫の山になっています。


「旅行を通じて夢や感動を届けたいです」という志望動機も多いですが、旅行代理店の仕事の現実は、法人や学校をまわって団体旅行の契約をとるなど、地味な部分があることを知っていますか?




a0001_014396.jpg




「入りたい」「好き」だけで仕事を選ぶことは危険






そもそも、「入りたい」「好き」というだけの職業選択自体が非常に危険です。
幼いころからずっと好きでありつづけるものなど、そうありません。


しかも、働いてもいない状態での「好き」は片想いにすぎません。
「好き」だけで会社を選ぶと、期待が大きいだけに、入ってからそのギャップに苦労するわけです。


好きな会社よりも、風土が合っている会社の方がストレスは少ないですね。
仕事選び、会社選びにおいては「好き」なことよりも「合っている」「向いている」を優先したほうがよいのです。
それは、まずは入社して働いてみることにより気づくのですが。
そのために異動、転職などを通じて緩やかに近づいていくことも方法のひとつです。




説得力のある志望動機とは?






「好き」なだけの志望動機は恐ろしく説得力がないです。


「昔からバラエティ番組が大好きでした」(テレビ局)、
「村上春樹みたいな作家が大好きで、そんな作家を発掘したいと思っています」(出版社)、
「玩具を通じて、世界中に夢と感動を伝えたいのです」(玩具メーカー)


こんな志望動機を書く学生は、インフラ系を受けたときに、


「御社の電気が大好きです!」(電力会社)、
「御社のガスは最高です!」(ガス会社)


などというのでしょうかね?


志望動機で聞きたいのは、「アナタとその企業が一緒に働く理由」です。
アナタとはどんな人間でこれからどんな活躍、成長をしたいのか?
その会社を「職場」としてどうとらえているのか?
その職場でどんな仕事をしたいのか?
一緒に働いてハッピーになりそうかどうかを知りたいのです。


「入りたい」「好き」というのは「入社意欲」であって、「志望動機」ではないです。
そもそも「好き」なだけの職業選択は危険です。
そして、「好き」という理由で企業や職種を選ぶから、無用な競争が起き、傷つき、就活がうまくいかなくなるのです。


仕事は好きなことよりも、自分に合っていることを選ぶのが自分も企業も世の中もハッピーになるのです。




ぜひ、入社意欲だけの志望動機は改めていきましょう。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。